どうも、oskn259です。
皆さんはReal World Assetという言葉を知っていますでしょうか?
それが何かについては、このページ の表現がわかりやすいと思います。
曰く
1 | 現実世界の経済活動の中で価値を持つ現物資産に対する権利やその他の権利などを表したデジタル資産 |
のことをRWAトークンと表現しています。
株みたいなわかりやすい金融商品だけでなく、原油や穀物みたいな物質的なものも含めてブロックチェーン上にトークン化するという概念のようです。
こうやって資産をブロックチェーン上に記録していくと何が嬉しいのでしょうか?
また、この動きは今後どんな発展を見せるのでしょうか?
界隈の評価は様々あると思いますが、今回は筆者の考えベースで書き進めていきます。
なんでもトークン化
これまでにもERC20による各種トークンを発行してそれを通貨のように流通させることは行われてきました。
NFTを発行してアートに結びつけるということもなされています。
より進んだ事例として最近では以下のような事例、実証実験も現れています。
- 不動産に紐づくNFT(ST: Security Token)を発行して売買
- 環境価値をERC20トークンとして表現し、それを売買
- 海外でのCDBC(Central Bank Digital Currency)の発行
- イベントチケットのNFT化による、制御可能な転売プラットフォーム
このように、業界の進歩によって様々なものがブロックチェーン上に表現されていきます。
ブロックチェーン利用の理由はケースごとに異なりますが、主には以下のような点が考えられます。
- 分散的であるため、企業や国などの中央集権による不正が物理的に不可能
- あらゆる価値をひとつのブロックチェーン上で表せば、それらの交換を定義することが可能
- CAP定理のうまいところを突いた、堅牢なシステムとしてのデファクトスタンダード
この資本主義の世において企業にとってメリットとなり得るのは2,3ですが、ブロックチェーンは必ずしも堅牢なシステムの最適解ではないので、2の点がわかりやすいメリットとなりそうです。
自ら発行したトークンは初めは電子的な数字でしかないが、他のアセットとの交換を通して価値の裏付けを得ていく、というストーリーがあり得ます。
モノの価値とはどれだけそれを欲しがる人が居るかで決まる、と考えれば、交換を受け付けるアセットの窓口を増やすことは間接的に需要を拡大することにもなるでしょう。
そう考えれば、現実世界に存在する価値はすべてブロックチェーン上にトークンとして表現した方が、その価値を維持するのに有効ということになります。
これは何かしら生産活動を行っているすべての人にとってメリットになるはずです。
このまま技術が進歩すれば、1枚あたりジャガイモ1個と交換できるジャガイモコイン、米と交換できる米コインが生まれるかもしれません。
以降こういった、極限のコモディティまで拡大されたトークンを便宜上ジャガイモコインと呼びます。
🥔
「カネ」に価値は無い
基本的にブロックチェーンはパブリックアクセス可能で、誰しもがコントラクトを作成したり取引を実行できます。
そう思うと、生産者自身がジャガイモコインのERC20をデプロイして、実際に収穫が見込める量をmintするということは可能です。
1ジャガイモコインを持っていれば、未来のある時点でジャガイモ1個の発想を受けられるという具合ですね。
理想的にはこんな具合ですが、物理的にはそこまで単純にことを運ぶことはできず、ジャガイモコインには配送の距離の問題、災害による不履行といった条件変動やリスクが内在します。
一見不安な感じもしますが、これって金融商品と同じじゃないですか?
債券は不渡リスクを承知の上で買ってそのリスク対価として利率があるし、株式も倒産リスク、下落リスクに対して同様です。
そう思えば、ジャガイモコインにリスクが含まれていることは当然、むしろ自然の摂理とも言えます。
反論は色々あり得ます。
- レストランなどにとっては、いきなりジャガイモが途絶えたら死活問題
- 販路を見つけること自体が大変な仕事
- というか現状の何が不満なんですか?
総じてこの枠組みで可能なのは、生産者の地位向上だと思っています。
この資本主義の世においてはスケールメリットこそが正義で、組織、資本、取引先を拡大したものに富が与えられるという仕組みです。
実際に手を動かし、物質的な価値を生み出している者を置き去りに、それをマネージする者ばかりが対価を得ています。
もっと言えば、それによって得た富がさらなる富を産む「金が金を呼ぶ」という状況です。
ジャガイモコインについていえば、食料品によって人が生きられるということが価値の源泉なのに、それがあまりに軽視されています。
農家の成り手がいないなんて当然の結果ですね。
理論上ではなく実際可能な形態で、生産者がより多くの選択肢にアクセスできる状況があれば、いくらかパワーバランスを変えることができそうです。
ブロックチェーンというあらゆるコトモノとの交換プラットフォームに生産者自身が参加し、自由に取引できる状況にすることがファーストステップになるでしょう。
このように生産者へとパワーバランスを傾ける試みは、実はそれほど新しいものではありません。
BASEでは個人がネットショップを開けるようになり、メルカリでは個人が気軽に手持ちの物品を販売でき、これはCtoC取引の促進と見ることができます。
ブロックチェーンを使った枠組みは個人販売者の選択肢をより増やすものという意味で、これをもう一歩進めた概念とも言えるでしょう。
一億総転売屋
そのようにして生産者自身がジャガイモコインを発行したとして、人々にはどんなインセンティブが働くでしょうか?
生産者は自らのジャガイモコインを、米コインなど他の生産物と交換しても良いですし、単に仮想通貨、法定通貨と交換することもできます。
おそらく、交換対象として認めるアセットとそのレートを生産者が定めることになるでしょう。
一方これを手に入れようとする者からすると、それを手にいれる理由は必ずしもジャガイモが欲しいという欲求ではありません。
自分はジャガイモが欲しいわけではないが、他に欲しがる人が居て条件よく交換できそうだから買っておく、ということが可能です。
これはまさに転売の状況で、転売の一般的なメリットデメリットである以下の状況が発生します。
- Pros
- 生産者は在庫リスクをすぐに解消できる
- 販路開拓を自らしなくて良い
- Cons
- 思った価格で最終消費者に届かない
- お得意様への安定供給が阻害される
しかしここではメルカリ等の転売とは状況が異なります。
ブロックチェーン上でのアセット交換と化した経済においては、
- 法定通貨のみではなく、特定商品のみと交換できる枠を設ける
- トランザクションログをトレース、転売屋の先にいるお得意様を検知して、次回からは直接の取引をすれば良い
- その上で転売屋には新規の販路開拓のみを任せれば良いし、そこで利鞘が生まれてもそれは立派なビジネス
- 1主体が購入できる総量を制限しても良い
といった対応が考えられます。
こうなれば転売屋は生産者の意図を破壊するような者ではなく、優秀な新規開拓営業です。
こうした売買はだれでも参加可能なので、例えば、売れなければ自分で食べるし売れたらちょっと儲かる、ぐらいの感覚で個人が買うことだって可能です。
商社が中央集権的に実施しているような仕事は、このようにして分散的に、かつ状況ごとに細かくチューンして効率よく実行可能なのです。
ジャガイモはお得意様には安定的に供給され、新規の顧客を転売屋が開拓し、生産者が指定した物品とはちょっと割安に交換してくれる。
なかなか悪くないと思います。
Anti Money Laundering
ここまで理想を書いてきましたが、これはほとんどジャガイモを個人向け金融商品にするという話なので、当然規制が必要な面もあります。
主には、犯罪収益の移転を防止するという金融業界の基本的な考えが適用されそうです。
ジャガイモコインが資金洗浄のプロセスに利用されたり、また、人体に害のある薬品、銃器などとの交換に充てられたりするのは、疑わしい取引としてwatchする必要があります。
筆者はそこまで知識がないですが、少なくとも必要になるのは本人確認のプロセスです。
ある取引について、買い手はどこの〜さんで、売り手はどこの〜さんです、ということが後から確認できないと調査のしようがなく、そうした理由からbinanceなどの仮想通貨取引所でもeKYCが必須になったと思われます。
つまりはブロックチェーン上のアカウントに個人情報を紐づけるということにはなりそうですが、例えばBTCやethereumのアカウントは秘密鍵と1:1の仕組みになっており、鍵や端末を無くした瞬間永遠にアクセスが失われるということになります。
それでは実用に耐えないので、別途DID(Decentralized ID)などの仕組みを導入して個人に一意のIDを振る必要はありそうですね。
これ以外にも対処すべき規制はまだまだありそうです。
すべての取引がブロックチェーン上で公開されてしまうのか?という問題も残っています。
まとめ
半分妄想ではありつつも、ブロックチェーン上にReal World Assetが表現される動きが進んでいくとどうなるか?というのを考えてみました。
そういう業界にいるからかもしれませんが、BTCの取引に10分かかるみたいな状況からはブロックチェーンは進歩していますし、そのスピードはかなりのものに見えます。
個人の感覚としては、今この世の中を構築しているのは「サービス」という名の主体郡であり、サービスは必ず何者かを信用することで成立します。
つまり究極的には、我々の預金が、証券が、アイデンティティがどこかの誰かの指先でいかようにもなる状況なのです。
(ちなみに筆者はfacebookのアカウントを謎の理由でbanされて復旧できていません)
一局に権力を集中させると何が起きるかは各分野ですでに確認されています。
分散化の概念を、いろんな領域で広げていくことが経済の、ひいては組織運営の次のステップなんだと思います。